とは言っても、だから運転免許返納はすべきではない、なんていう気はさらさらない。
免許返納を決めた高齢者の皆さんには敬意を表する。やはり、東毛袋自動車暴走死傷事故を例に挙げるまでもないが、高齢者の運転による事故を減少させるには運転免許返納が有効な手段だと思う。
しかし調べてみだが、国立長寿医療研究センターによる「運転中止による弊害 ~運転を中止すると、要介護状態や認知症発症のリスクを高める~」というページがある。
せっかく国立の研究機関が注意喚起をしているのに、あまり世間一般に知られていない気はする。免許返納にブレーキをかけるような内容でもあるから、当然と言えば当然か。
私が言いたいのは自動車運転がおぼつかなくなった方が自動車運転免許を返納して万事解決、というわけではない、ということだ。むしろ認知症との戦いのスタートラインかもしれないということを、是非高齢者がいらっしゃる家族の皆さんには知っておいてもらいたいということだ。私自身も、いつかそういう日を迎える可能性は十分にある。私も自覚していきたいと考えている。
なぜ突然タイトルのようなことに関して私がブログを書こうと思ったか、そういう事例ではないかと思われる方が身近にいるからだ。近所に住む70代の女性が最近、自動車運転免許を返納した。突然、といっても良い。まったく自動車運転に支障はない、活発なむしろ頭の回転の早そうな方だったのだ。ところが半年くらい前に免許を返納してから彼女の行動が明らかに変わってきた。同じ話や同じ質問を何回もする、他人の名前を忘れる、あまり笑わなくなった、以前はほとんど怒らなかったのが怒ることがたびたびあるようになった、等々である。私だけがそう思っているのではなく彼女をよく知る人はみな、口をそろえて最近変じゃないかと心配するようになってきている。
私が住んでいるのは関東平野の北部、田園が広がるはっきりいって田舎なのだが、自動車がないとかなり不便な地域である。最寄りのゴミ捨て場までも100m以上はある。近所のスーパーも自転車で10分以上で途中、鉄道の跨線橋を越えなければならない不便な土地だ。しかも彼女は一人暮らしなのである。配偶者の方はもうおらず、お子さんもいらっしゃるが、みな東京かその周辺の都会に住んでいる。
そんな彼女がなぜ突然に運転免許を返納したのか。彼女自身が「田舎の年寄りが交通事故でも起こすと子どもの出世に差し障るからね。子どもから勧められて返納することにしたんだ」と語っている。おそらく本当のことだろう。遠くの都会に住む子どもから言われて返納したに違いない。ちなみにお子さんのひとりはかつて桜田門のそばに勤務されていた(今は転勤して少し離れているようだが)。
それにしても、まったく毎日の運転に支障はなかったのに、むごいことをするものだなと感じてはいるのだが、赤の他人の私がとやかく言えることではないし、せめてこのブログタイトルのことはもう少し広まってほしいものだなと思っている日々だ。
しつこく繰り返すが高齢者が運転免許を返納してすべてが終わりではない、むしろ認知症との戦いの始まりかもしれないのだ。