田舎者Yの日記

定年退職して農業に従事している者のブログ

(海外からスパムコメントが続きましたので、コメントは承認制にします。)

 山河の謎

 埼玉県北部で生まれ育った私はカミさんの実家のある埼玉県大里郡岡部町山河*1というところに越してきた。引っ越しといっても大した移動距離ではなく、ほとんど地元のうちといった範囲の移動である。岡部町はかつて場外舟券売り場の設置で地方ニュースをにぎわしたことがある。あるいはご記憶の方もいるかもしれない。逆に言えば、そのくらいしかニュースにならない極めてのどかな田舎町である。

 さて、その字(<「あざ」:都会では死語ですね)の「山河」が問題だったのである。転入手続きを町役場で行ったのであるが、その際地名にフリガナを振らなければならなかった。(田舎の役場で町内の地名にフリガナを振る必要はないような気がしますが…)
 そこで困ってしまったのである。通常だと「ヤマガワ」だと思うのだが、地元の人は何度聞いても「ヤマガア」と発音しているのだ。しかしいくらなんでも山河に「ヤマガア」は変だろう、さりとて役場の人に聞く勇気もないし…。(基本的に私は小心者)
 仕方なくその場は「ヤマガワ」と振っておいた。役場の人から別段チェックも入らなかった。

 帰宅後、その一件をカミさんに話すと微笑みながら「ヤマガワでいいのよ」とのこと。それ以来しばらくそのことは忘れていた。

 またしばらくして段々と慣れてきた町内(といっても一面、畑しかない)を散歩していたところ何気なく道標をみると英語で地名が"OKABE T. YAMAGA"と書いてある。
 「なにっ!ヤマガ!」 ヤマガワだと地元民のカミさんから教えられた私はかなりのショックを受けた。
 そのときは気がつかなかったのだが、総務省の郵便番号検索で調べると、郵便番号369-0217は岡部町山河 ちゃんと「やまが」と振ってある。つまりは「ヤマガ」が正解だったのだ。ちなみに生まれて三十数年、生粋の地元っこのうちのカミさんはこのことを知らなかった。畏れ多くて聞けないのだが、おそらく義理の父母も知らないのではないだろうか。

 ちなみに地元の人は「ヤマガア」と発音している。(ガにアクセントがある)
元々は山川と書いたそうであるが、その話はまたいずれ。

地名は誰のものか

 以前、聞いた話だが、群馬県に北橘村(きたたちばなむら)という村があるそうである。昔、国に登録するときに橘山の北にあるという由来から正式名称は「きたたちばなむら」と登録したそうである。地元の者は音読みで「ほっきつ」と読む場合が多いそうである。したがって北橘村立北橘中学校は「きたたちばなそんりつほっきつちゅうがっこう」と読みのだと聞いたことがある。伝聞なので事実と反するかもしれない。

 とにかく、地名というのは行政が管理しているある種の「符号」であるが、結局は地元の人間が日頃から口に出して使ういわば生きた「符号」とでもいえるのではないか。かなり前、都会で情緒ある町名が消えることが話題になったことがあった。今、平成の大合併で同じようなことが日本各地で繰り返されていることだろう。しかし、人の口にのぼる地名は、そう簡単に整理されるものではないのではなかろうか。

 整理されたとしても、上記の山河のように、地名の持つ「いい加減さ」まで制御されないのではないだろうか。

*1:追記:平成18年1月1日から合併により埼玉県深谷市山河となった