田舎者Yの日記

定年退職して農業に従事している者のブログ

(海外からスパムコメントが続きましたので、コメントは承認制にします。)

ご近所の農協組織

 私はカミさんの実家に同居している。義父は専業農家であるが、私の年収を越える安定した収入を得ている。いつかは私も今の仕事を早めに辞めて、義父の見習いとして働きたいと思っているのだが、現実はそんなに甘いものではないらしい。義父自身、寸暇を惜しんで働いている。それに加えて近所の問題がある。

 日本の農業は他の産業に見ない形態をしている。基本的に個人事業主である生産農家が直接に市場あるいは消費者へ生産物を提供することは稀で、中間に農協(経済連)や生協といった流通その他諸々を面倒を見る団体が入る。


 農協は農業協同組合、元来は農家の出資によって成り立っている組織である。

 うちの義父はこの地域でも出荷量が多く、流通自体を効率良く、できれば出荷量の多い農家の希望が実現できるように農協支部の組織改革をしたいらしいが、なかなかうまく行かない。

 実は私もワガママなほうなのだが、義父の話を聞くとうちの近所の農協支部の農家の会合は「相当なもの」らしい。

 例えば、会議の席では酒を出さない、ということでも相当もめたらしい。結局は酒を出さなくなったらしいが、義父によると夕方からの会議の席で酒が飲みたい農家がゴネたらしい。*1
 彼らは飲酒運転による悲惨な事故のニュースを見ないのだろうか?世間が飲酒運転をなくそうとしていることに気がつかないのだろうか?

 それから定期的な総会の後の飲み会ではコンパニオンを呼ぶらしい。一回十万円前後の費用はすべて組合費から支出させている。聞くところによると、うちの支部の組合費は出荷量に応じて多少の差があるらしい。組合費を多く払っている者にとってそのような飲み会に毎回、組合費が使われるのは快い話ではない。

 例えてみれば、うちの近所の農協支部は「常任理事国のいない国連」のようなものかもしれない。農家一軒一軒に平等に発言権が与えられ、声高に主張する者、グループ(仲間)で集まって発言する者の意見が通りやすいようだ。


 そこでうちの義父は支部を出荷野菜の品目ごとに分けて役員を分散して、出荷量の多い順に役員を委嘱するなど、義父の言うところの「一生懸命にやっている農家」の意見が通りやすいように組織改革をするらしい。


 しかし農協の場合、各農家が個人事業主、言ってみれば社長である。また同時に労働者でもある。ご近所の農家は同業者であり、競争相手でもある。しかも仕事が土地に縛られているため、この複雑な関係が固定され、逃げ出すことができない。ほとんど毎日、公私の場を問わずに顔を合わせる連中である。

 義父の話を聞いていると、たしかにヒドイ話が多いのだが、この小さな集落でも格差が明確になりつつある。人の出入りがほとんどない地域で格差が歴然としつつあるのだから、これはちょっと大変なことになるのでは…と内心思っている。


 やはり簡単に農業に参加することはできないか。でもやりようで魅力のある産業だとも思うが…。

*1:会議の後にも酒を出さないということは即決定されたそうである。やはり飲酒運転を無くそうという機運は田舎でも浸透している。