田舎者Yの日記

片田舎のバイク乗り・Linuxユーザ、つまり変わり者のブログ

益川先生の講演会を聞いてきた

 今日は自宅から近い埼玉工業大学で行われた益川敏英先生の講演会を聞きに行ってきた。益川先生は2008年に素粒子理論における「小林・益川理論」でノーベル賞を受賞された方だ。

 「社会と科学」という演題で2時間にわたる講演だったのだが、時間が非常に短く感じられた。いろいろな話題に触れつつ、話が広がってまとまりかけたところで時間終了であった。
 益川先生はいろいろなエピソードを話されていたのだが、科学が高度に発達した社会で一般市民はどう生きたらよいか、ということを語っておられたのだと思った。


 科学が高度化するとブラックボックス化する。TVをなおせなかった電子工学の大学教授のエピソードをされたのだが、理論は知っていてもすべての技術加工に精通しているわけではない。こういうところにこそ似非科学が入り込む余地ができる。益川先生はこれを人間疎外ならぬ「科学疎外」と称する。
 これを打開するのが「井の中の蛙理論」だと言うのだ。一つの井戸に住む蛙は井の中の蛙だが、これを井戸から出して隣の井戸の横に置く。そうすると他にも井戸があることがわかり、その類推で他にもたくさん井戸があることに気づき世界観が広がるというのだ。「1.5学べ」とも言い換えていた。つまり、まずは一つの分野を一生懸命に勉強する。よくを言えば2つのことをやれば良いのだが、それはとても無理なので他の分野も「少し」やる。最初の分野の半分、0.5相当を学ぶ。これが益川先生の言うところの「1.5学ぶ」ということだ。つまりはこれが他の井戸に置かれた蛙だ。一つの分野だけだと視野が狭い。しかし少しでも他の分野にも目をやれば急速に視野が広まる。こういうようなことをおっしゃりたかっただろうな、と私は思った。


 この井の中の蛙理論という話の他にも、ファーブル昆虫記の蚕の病気の部分の話とか、エジソンが発電事業に失敗した話とか、福沢諭吉が語ったという「自由といえとも矩を越えず」という話などいろいろな具体的なエピソードを交えて話された。(後に岩波書店の方から福沢諭吉の言葉ではないではないか、との指摘を受けたそうだ。)
 ところで帰宅後、これらのキーワードで検索したら下記のサイトが見つかった。

渡部通信〜4・25教育集会に1200人

 そうそう、まさにこういうお話だった。多少話の筋は異なるのだが、大体はこういうお話であった。(インターネット検索ってスゴいな)

 実は益川先生はこの日午前中に都内で講演されて、午後当地にいらっしゃった。一日に2回の講演である。おそらく両方とも2時間超のものであっただろう。想像するにノーベル賞受賞後はあちこちで講演を頼まれているのであろう。すごくエネルギッシュに講演されたのだが講演後の先生のお顔はこころなしか疲労の色が浮かんでいるように見えた。
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 講演後の質疑応答で、勇敢にも大学受験浪人生の方が質問された。勉強の意欲が減退しているとの悩みだった。先生は浪人なんて気にするな、悲壮感を持つ必要は全然ない。人生は長い。なんでかんで現役合格を要求する社会の見方こそおかしい。それから大学生の就職難にも触れて、新卒者のみを偏重する日本の会社はおかしい。そもそもドロップアウトを許さない日本の社会がおかしいのだ、とも述べられていた。この最後の浪人生とのやりとりが非常に印象的であった。