ごくたまに仕事で英語のネイティブ・スピーカーと話す機会がある。前の職場では白人のニュージランド人の人と毎日のようにおしゃべりしていた。転勤後の今の職場ではほとんど話す機会はないのだが、それでも過去にのべ三十名くらいの外国人と話をしてきた。
何億人も地球上には英語話者がいる中でたった三十人くらいのサンプルで偉そうなことをいうのは間違っているのかもしれないが、以前よりも強烈なアクセントの人が減ってきている気がしてならない。若い頃オーストラリア人に「グッダイ、マイト!ヘイゴン?」と言われた時はオーストラリアって英語が公用語 ではなかったのではないかと思ったものだった。最近の、特に「若い」英語話者は方言丸出しで話すと相手がわからないということを心得ているので、私(日本人)にも聴きやすい発音で話してくれているのだろう。
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それでも、私の親友で今は Facebook でやりとりするだけになってしまったニュージーランド 人のD君は、何度もイギリスを訪問しているにもかかわらずややアメリカ英語に近い発音でいつも私に接してくれたのだが、彼の発音で唯一気になったのは 'often' だった。私は中学以来、いろいろな英語の先生から often の t は黙字 で発音せず「オッフン」と発音すると教えられてきたのだが、我が親友の D君はいつも「オフトゥン」のように t をはっきり発音するのだった。
そんなことをすっかり忘れていたのだが、たまたま帰宅途中のクルマのラジオで聞いていた放送大学 の番組で突然そのことを思い出した。以前にも書いたことがあるのだが、私は極度のスポーツ嫌いで、ナイター中継を流すラジオの民放はほとんど聞かない。専らNHK か、FM局の音楽を聞いているのだが、今は夕方には相撲中継を放送しているので仕方がないので放送大学 を聞きながら通勤している(あまりこういうサラリーマンはいないかもしれない)。たまたま聞いていたのが「英語の軌跡をさかのぼる旅」という番組だったらしいのだが、その中で先生が「英語は歴史的経緯などによりスペリング と発音が乖離してしまっているのだが、発音をスペリング 通りに(つまり昔の発音のように)発音しようという運動がある」と話された。そこで例に出されていたのが、この 'often' だったのだ。それで長年の謎が氷解した次第だ。
調べてみたところ、これは Spelling pronunciation と呼ばれるものらしい。
Spelling pronunciation - Wikipedia, the free encyclopedia
ついでにこの「英語の軌跡をさかのぼる旅」は 2013年度の講座の再放送らしいのだが、下手の横好きで英語に興味がある私には応えられないような内容だ。
第1回 日の沈まぬ言語 第2回 英語の始まり 第3回 ヴァイキングと英語 第4回 ノルマン・コンクウェスト (1066) と英語の運命 第5回 ジェフリー・チョーサー と英語の復興 第6回 神の言葉と人の言葉 第7回 方言の時代から標準語の時代へ 第8回 言葉の洪水 第9回 春爛漫: ウィリアム・シェイクスピア 第10回 新天地へ: アメリカ英語の誕生 第11回 正しい英語(1): 規範文法の産声 第12回 正しい英語(2): 発音の規範と多様性 第13回 植民地主義 と英語の普及: カリブ海 諸国 第14回 蒸気機関車 と英語 第15回 エピローグ: 英語の未来
放送大学 の印刷教材は少し高いのだが、これはあとで買って読みたいなと思った。
【追記】
いきなりのホットエントリー入りでビックリしました。先日ブックマークした id:watanabe_eigo さんの記事の通りかも。
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やはり英語関係の記事は、はてなー の皆さんの琴線に触れるようですね(^^:
それからいつも id:watto さんが真っ先にブックマークしてくれるのが効いていたのかも、感謝申し上げます。
うちの職場は外国籍 の方は基本的に派遣で毎年のように変わり、安定しないせいもあって次々と若い方が来るのですが、現在はロンドン生まれのアジア系オーストラリア人の方、Pさんがいらっしゃいます。この方にもインタビューしてみたのですが、 「often をオフトゥンと発音する人はいるね、自分はオッフンかな?island の s を発音するかって?いや、アイランドとしか発音しない。アイスランド とかイスランドって発音は聞いたことがない」との回答でした。上の英語版 ウィキペディア の Spelling pronunciation の例にあった island は確認できませんでした。やはりブックマークの指摘にあったようにニュージーランド 方言なのかな? それからこのPさん、ロンドン生まれにしては全然ブリティッシュ・アクセントでないのですが、父の関係で各国を転々としたせいかも、ともおっしゃってました。「方言」というのは人が物凄い勢いで行き交う現代では薄まる傾向にあるのかな、とも思いました。このエントリーにあるスペリング 通りの発音というのもひょっとしたら英語の国際化のなせる技なのかもしれません。高いけど放送大学 のテキストを買って読んでみようと思いました。(実はまだ買ってない)