今月のはじめ新潟県の高校で野球部のマネージャが練習後に倒れて亡くなるという痛ましい事故があった。
この記事に対するはてなブックマークのコメントもたくさん書き込まれており、新聞社への批判など、多少記事内容とは直接関係ない方向の議論もみられた。
はてなブックマーク - 女子マネジャー死亡、「呼吸」誤解? AED使ってれば:朝日新聞デジタル
この記事を読んで私が一番に思い出したのは地元で受けた救急救命講習会のことだった。なんの因果か、私は2年連続で、異なる会場で異なる消防署の講師による救急救命講習を受けたのだった。
わかりずらい表現で恐縮だが、たまたま講習生が少ない(足りない)救急救命講習会のそばに、たまたま2年連続で(同じ場所ではなかったのだが)居合わせてしまい、急遽受講生になってしまったということだ。(もう少し正確に書くとこの種の講習会は所轄の消防署へ受講者名簿を事前に提出する必要がある。その事前準備の段階で「受講生が少ないな…」とボヤく担当者のそばにたまたま居合わせたために受講者名簿に掲載されてしまった、ということだ。少なくとも開講2週間前には受講することは予め通告されていた。)
とにかくその救急救命講習は、意識を失って倒れてしまった人がいた場合の処置の仕方、心臓マッサージ、AEDの操作方法が主な内容だった。通常このような場面に遭遇した場合は1人で対処するのではなく、できれば三人くらいで対応してほしいとの話だった。つまり現場で倒れた人に対応する人、119番通報をする人、AEDを取りに行く人、の最低3人は必要とのことだった。もちろん通報やAEDがそろった後、もし心臓マッサージをする場合は、この3人で交代で心臓マッサージを行うのだ。それくらい心臓マッサージは行う側も体力を消耗するのだ。
2回めに私が普通救命講習を受講した際に講師から「さいたま市のASUKAモデルを知ってますか?」と聞かれた。当時、私は全然知らず、講習会参加者のほとんども知らなかった。
ASUKAモデルとは平成23年にさいたま市内の小学校で体育活動中に倒れて亡くなってしまった桐田明日香さんの事故の反省から作成された重大事故未然防止のためのテキストである。
桐田明日香さんは駅伝大会の練習中に倒れ、すぐに保健室に運ばれたが、しばらく呼吸をしていたようなのでAEDを使用しないでいたところ容態が悪化して亡くなってしまった、ということだそうだ。その際の呼吸は「死戦期呼吸」と言われる通常の呼吸ではないもので、この時点でAEDを使用していたならば命が助かっていた可能性があるそうである。
死戦期呼吸に関しては以下のサイトにある動画の3分20秒あたりにある。死戦期呼吸は初めて見る方にはショッキングなものなので、もしご覧になる方はある程度覚悟してみてほしい。
とにかく私が講習会を受けて学んだことは以下のようなものだ。
- 突然倒れ反応がなく普段通りの呼吸がない、あるいはあるかはっきりしない場合もAEDを用意して心肺蘇生を行う(もちろん救急通報も行う)。この初期段階の時間が生死を分ける。早く対処すればするほど救命率は上がる。
- 呼吸しているようにみえる場合も死戦期呼吸の場合がありうる。その場合もAEDによる除細動を実施する。
- AEDは起動させると人間の声で手順の説明をはじめる。慌てずにその指示に従えば初めての人も施すことができるはずだ。その際AEDのパッドを直接体に付けるというのがポイントになる。もし正常に呼吸している場合AEDは自動的に電気ショックを停止する(あるいは「必要ない」と音声で指示する)。だから死戦期呼吸かどうか判断せずにとにかくAEDを作動させることが重要だ。
この「正常時にはAEDが自動的に停止して電気ショックを起こさない(あるいは必要ないと告げる)」ということがあまり広く知られていないような気がする。こういうことが広く共有されることを切に望む。
人生何が起こるかわからない。講習会を受ける時間もないという方も、AEDの操作方法を解説しているページを一読されることを是非おすすめしたい。