田舎者Yの日記

定年退職して農業に従事している者のブログ

(海外からスパムコメントが続きましたので、しばらくコメントは承認制にします。)

近所の畑を眺めて

 恒例の週末の散歩に出かけた。都合で日曜日の朝の散歩である。土曜日よりも明らかに車の量が少ない。一時期製造業を中心に土曜休業が増えたが、おそらく中小企業を中心に土曜営業も増えたのだろう。

 相変わらずウグイスのさえずりが聞こえる。さすがに家のそばでは鳴かなくなったが里山の薮で鳴いている。"Japanese Bush Warbler"たる所以である。8月までさえずりは続くそうだ。もうすぐ郭公や不如帰の声も聞こえるかもしれない。


 一年を通して散歩をしていると何も作っていない畑のほうが多いことに気づく。もちろんすべてが休耕地というわけではない。ほとんどが年1回作なのだ。ネギならばネギ、ブロッコリーならばブロッコリーだけを作る農家が多い。収穫が終わると畑はさら地となる。年配者が耕す畑ほどその傾向が見られる。今、若者が就農する例が減っている。いきおい何も植わっていない畑が増えるわけだ。

 義父が言うのには「農業はそういうものだと思い込んでいるのだろう」とのことである。義父は畑で年3回野菜を収穫する。視察に来た農業普及所の所員から珍しいと言われたことがあるそうである。義父はいろいろなノウハウを持っているようだ。例えばうちの主力生産物はブロッコリーとレタスとトウモロコシである。それぞれアブラナ科、キク科、イネ科と別々の科で連作障害を起こりにくくしている。特にトウモロコシは成育力が旺盛で(最近バイオエタノールの原料としても注目されている)トウモロコシを組み合わせることで年3作が可能になるそうである。


 「農家は工夫が足りない」と常々義父は言う。野菜が暴落するのもそうだ、とさえ言う。年間を通じて野菜相場に変動がある。どの地域からいつ頃どんな野菜が流入するのかの傾向がある。ほとんどの農家は出始めの相場が高めのところを狙ってサクづくりをし、気候によっては作物がタブつき畑での大量廃棄になることが発生する。義父が言うのには2回め3回めに相場が若干高くなることがあるそうである。大きな儲けはないが安定して出荷がさばける。相場が暴落後、やや安定する時期にあたることもあるそうだ。義父は毎朝『農業新聞』をチェックしてから畑に出かけるのだがw「市場動向に詳しい農家ってそんなにいないんじゃねぇーかな」とも言う。


 近所では田植えが始まっている。田植えでちょっとしたトラブルになることもある。というのも水田と畑が混在するうちの近所では野菜畑に水が入ってしまうことがあるからだ。

 この時期の田植えも野菜農家の義父は内心面白くなく思っているようだ。私たちが子供の頃は関東地方の田植えはもっと遅かった。ちょうど梅雨入り頃から田植えをしていたと思う。
 解説が下記のページにある。
http://www.toukei.maff.go.jp/dijest/kome/kome05/kome05.html

 関東における田植えの早期化はコシヒカリなど元来は寒冷地で生産されていた種の普及が大きく影響しているようだ。しかし、義父に言わせると埼玉ではおいしいコシヒカリはできにくいとのこと。山間地の朝昼の寒暖の差が大きい地方ほどおいしいコシヒカリができるそうである。埼玉、特に熊谷周辺は夏の暑さが厳しいので、新潟などと同じペースで植えると育成が進みすぎ「過熟」という状態になりやすい。米は刈り取り時期を過ぎると実に白い部分が生成されて風味が落ちるそうである。これが過熟であるとのこと。

 「その土地その土地にあった方法をよく考えねぇで、たぁーだ、よそのマネばかりする。何も考えてねぇ農家が多すぎる。」と義父は手厳しい。


 近所に会社をリストラになり仕方なし(だと思う)に農家を始めた方がいる。義父の農業を参考にしながら自らも工夫しながら2,3年のうちに安定した収入をあげたそうだ。(総売り上げは年間一千万円近いと聞く。経費もあるので単純には言えないが、小企業で働くよりは収入があるのではないだろうか。)工夫すれば農業もなかなか魅力のある産業であると、端で見ていて本当にそう思う。


 その一方で、都会から農業に参入しようとしてうまく行っていない例もある。また、うちでは一時期北海道からの農業研修生を受け入れたことがあるのだが、関東地方以外で農業をやっていくというのもいろいろと大変のようでもある。また巨大消費地東京に近い(輸送コストの負担が少ない)関東地方でさえ、補助金の交付なくてはやっていけない例が少なくない。(「補助金もらわないとやって行けないなんて産業としてはオシマイ」と義父はこの点にも厳しい。)

 この辺のことは長くなるので、また機会があれば書いてみたい。