田舎者Yの日記

定年退職して農業に従事している者のブログ

(海外からスパムコメントが続きましたので、しばらくコメントは承認制にします。)

職場のニュージーランド人はプールの監視委員だった。

 31日にふじみ野市のプールで小学生の女児が亡くなった事故は本当に痛ましいものだった。私もちょうど小学校2年生の息子がいるので決して他人事ではない。

 以前にも書いたが私の職場にはニュージーランドから来た方がいる。自分の英語会話力向上のためにもよく彼と話をするようにしているのだが、彼は学生時代プール監視員(彼は"lifeguard at pool"と言っていた)をしていた経験があると言っていた。ニューランドのプール事情は日本とかなり違うようだ。

 それから『ラスト サムライ』がニュージーランドで撮影されたり、同じ太平洋にある国ということで、ニュージーランドでは親日家が少なくないようである。彼もそうなのだが、今回の事件や職場の古びたコンピュータシステムw などを目の当りにして「日本は技術先進国だと思って来日したが、日本に対するイメージが(実はそうでもないと)変わった」とも言う。

 まず彼の監視員としての経験についてだが、彼はヘイスティングス(Hastings)という町の高校に通っていたのだが、その頃に監視員としてのアルバイトを経験している。ふじみ野市のニュースを聞いて彼が驚いていたのは以下の点である。

  1. 彼が働いていたプールではあのような排水パイプはなかった。スリット状で手が入らないような狭い開口部になっている。日本の技術力ならばそれくらいのことができるのではないのか。
  2. 監視員の仕事に就くには地方自治体("local goverment"と彼は言っていた)の講習を1ヶ月(!)受ける必要がある。その修了証がないと監視員になれない。なぜ日本では基礎知識・技能を教えられることなしに監視員になれるのか。
  3. 当然現場には緊急時のマニュアルがあり、始業時に毎回確認させられる。なぜ、ふじみ野市のプールではそれが行われなかったのか。

 全く返す言葉がない。ただ、1.に関しては彼のプールは流れるプールではなかったのかもしれない。強力な流れを発生させるためには大口径のパイプが必要なのかもしれない。しかし、彼の言を借りるまでもなく、日本の技術力をすれば水の採り入れ口が丸形状のパイプでなくとも流れが作れると思う。是非、関連技術者による改良をお願いしたいものだ。

 おそらく2. 3.に関してもこれと似たようなことを既に実施しているプールはあるだろう。それにしても「1ヶ月間」講習を受けさせるとは。民間企業ではなかなかできることではあるまい。日本でも国や地方自治体が中心となって資格認定団体などを作って、監視員の受講を義務づけたらどうだろう。

 続けて彼は「もし私がその場にいたら、蓋が外れたと気がついた時点でプールに飛びこんだだろう。そしてその前に立って他のお客が近づかないようにしただろう。それからプールから出るように呼びかけただろう」と言う。危険には体をはって防ごうとしないといけない、と言いたかったのかもしれない。


 親日家で技術立国日本を信じて来日した彼を裏切るようなニュースが続いていて残念なのだが、数年来の滞在で日本の実情というものがよくわかったのではないだろうか。

 以前彼は日本人は勤勉だと言っていた。そん神話も崩れつつあると私は思うのだが、このような悲惨な事故も起こる「普通の」国だからこそ、個人の努力が重なって技術立国日本というステータスにまでたどり着いたと私は思う。私のこの意見に彼はどう答えるか聴いてみたい。


 それからこの事件に関して更に2点書き加える。

 まず「ふじみ野市」について。NHKのアナウンサー(たしか末田正雄さん)は一度、「ふじみ市」と発音していた。すぐ隣に「富士見市」があるが全く別の市である。今回事件のあった「ふじみ野市」は昨年、上福岡市大井町が合併してできた新しい市である。(合併にあたってその名称に隣の富士見市から難色が示されたとも聞く。それでひらがなになったとも。)

 今回の事件は「大井プール」で起こっている。間違いなく旧大井町の施設であろう。現ふじみ野市市長にとっては、まさかプールの蓋が針金で止められていたとは寝耳に水であっただろう。市の管理責任は追求されなければならないが、真に責められるべきは旧大井町の職員ではないのか。

 全国各地で市町村合併が行われたが、今回の事件は、旧自治体でのずさんな管理体制が新しい自治体に伝わっていなかったという点で、市町村合併が生み出した悲劇という側面もあると思う。


 次に、これは声を大にしては言えないのだが、親の責任もあったと思う。お母さんは自分自身が連れていった目の前でこういう事故に遭ったのだから非常に自責の念にとらわれているとは思うが、やはりプールで小さい子を連れていくときは目を離してはいけない。

 実際の現場がどういう状況だったのか。友人に近づこうと潜水していたとも聞くので、一瞬のできごとだったのかもしれない。もちろん市のあまりにもひどい管理は糾弾されるべきものだが、多少は相殺されるのかもしれない。

 直径60cmのパイプ、しかもいい加減とはいえ半分カバーがあるパイプが小2の女児を一瞬にして飲み込んでしまうものなのだろうか…。

(追記)
 事実としてこのような事故が発生しているのだから、そうだったのだろう。やはり排水口(特に流れるプールの)の吸引力は想像を越えるものなのだろう。